誰かの足音

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「本当に何もないから」 「会議室行くぞ」 「富永くん…」 「なんだよ」 「そんなのどうでも」 「一緒に仕事をすることはないけど、あの人が見ている範囲でできるかもしれない。正直おれそこを目指している。だから、結城に先こされたと思った」 「からかわれただけだ」 「しつこいな。気分悪くなるだろ」 「ごめん」 富永麻人(アサト) リーダー格の体育系。結城と正反対の性格だが親近感がもてる。疑いの目で見られたくない。  諏訪は平然としていた。結城は同期に気づかれたくない思いで、無理やり意識を閉じ込めた。裏目に出たかもしれない。できれば会社では接触したくない。 『おれのことは自分の都合で受け止めろ。周りの噂は気にするな。苦しくなったら電話しろ。できるだけ素の姿で対応する』 諏訪はそう言ったが、社内で諏訪の話題を耳にすれば敏感に反応する。 あんなキス、しなければよかった。 芽生えかけた恋心を結城は諏訪のせいにした。
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