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茜色に照らされた夕暮れの校舎は、秋らしい風流なものであったが、何処と無く寂しさを感じた。
いそいそと後片付けに勤しむ生徒達は、"祭"が無事終わる事に充実感を覚えながらも、少し名残おしそうにも見える。
僕もその群に混ざるようにして、片付けを手伝うフリする。
1番楽なゴミを捨てを係を選択して、そそくさと体育館裏のゴミ処理場へ向かった。
茜色をした夕日は僕たちを温めてくれるかと思いきや、北からの厳しい風が僕らの体温を奪ってゆく。
ついこの前まで綺麗な紅蓮に色づいていた紅葉の葉はまるで老婆のようにしわくちゃに枯れ果て、終にはひらひらと落ちて散ってしまった。
僕はそんな紅葉の葉を眺めながら、もうすぐ訪れる厳寒の季節を憂鬱に思いながら、体育館裏へ向かった。
ゴミ処理場へ行き、ゴミを捨て教室に戻ろうとしたところ、1組の男女が何やら話をしているのが目に入った。
これは祭後特有の恒例行事だ。
僕は盗み見るなんて野暮な事はしたくい為、早々に退散しようとした。
「ずっと好きでした。」
僕の心の中に響きわたるその愛おしい声は僕を固まらせた。
女子の告白に男子は黙って頷いた。
紅に染まった紅葉の葉のように、彼女の頬が真っ赤に染まる。そして咲きほころんだ花のように可憐な笑顔を向けていた。
彼女の恋は大きく実ったこの瞬間が、今までで1番美しい彼女の姿だった。
そしてその瞬間は僕が何年もひっそりと育ていた恋の葉が、一度も紅く染まる事はなく朽ちて落ち葉となってしまった瞬間でもあった。
~end~
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