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秋空「閉めろ」
と言って、鍵を捻ってみせる
十日、扉の前。鍵を掛ける
秋空
「これより第11回秋の特別予算会議を始める。
出席を取る。呼ばれなかった者のみ申告しろ。
運動部:送球部、避球部、吹奏楽、以下略。
文化部:茶道部、将棋部、図書部、以下略。
呼ばれていないもの」
左側末席、眞棚医(18)手を上げる。
秋空
「所属部、名前を」
眞棚
「夏目漱石研究部、名前はまだない」
秋空
「そんな部は存在しない」
眞棚
「それが30分前に発足したんです。届けも出しました」
秋空「これか?」
と、届出を出す。
眞棚、頷く。
秋空
「不受理だ。シャチハタでの捺印があった。無効だ」
眞棚
「全員、届出印で捺印させています」
秋空
「水掛け論になっても仕方がない。
別の不備を指摘しよう、捺印が不鮮明だ」
眞棚
「それのどこが?はっきりと見えるじゃないですが」
秋空
「掠れがある」
眞棚
「不服だ」
秋空
「ならば民主主義だ。この印鑑が掠れもなく、
鮮明だと思うものは手を挙げてくれ」
眞棚、手を上げる。
他一同、無言であげられた手を見る。
秋空
「というわけだ。不受理だ。残念だったな」
眞棚
「そんな!こんなの暴力だ、ただの暴力じゃないか」
秋空
「貴重なご意見だ。記入用紙があるから
必要事項記入しその上で提出してくれ」
眞棚
「腐ってる」
秋空
「関係ないものにはご退場願おう。
そちらの扉は開かないので、
後ろの窓から出て行ってもらう」
眞棚
「馬鹿な、ここは3階だぞ」
十日、眞棚の横に付き、手を取る
眞棚、舌打ちして手を払う
眞棚
「子供じゃないんだ。
退室するのに人の手なんかいらない」
秋空の横を通り窓へ。
眞棚、窓を開ける。風が髪をなびかせる
秋空
「残念だったが、結果が全てだ。
敗者として、最後に何か言い残すことは?」
眞棚、振り向く
眞棚
「残る者に言い残したい。
この学校の未来を。そして戸締りを、頼む」
眞棚、あいた窓に背中から倒れこむ。
外、木の枝が折れる音。
ぼふっという暑い布に落ちる音。
十日、窓を締めて、鍵を掛ける
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