転調

3/8
前へ
/18ページ
次へ
秋空、十日の着席を見て。   「それでは話し合いに入ろう」 秋空 「議題は一つ。PTAからの寄付金についてだ。  既に知っているものも多いとは思うが、  この会議は10年前から1度たりとて、  まとまったことはない。  寄付金の使い道が決まらなかった場合は、  体育祭が開催され、その褒賞となる。  諸君もご存知の通り、そこで少なくない金額が  教師チームや保護者のチームに渡たる。  私たちに残される金額は、雀の額ほどもないのが現実だ。  それはPTAからの辛辣な評価だ。  自主性だ、自立だと、美辞麗句に過ぎないと。  話し合い一つまともにできないお前等には、  その程度で十分なのだ、と」 一同、沈痛な表情。辛い現実を思う 秋空 「私も、皆と同じ気持ちだ。私は私たちの意思と、  力とを明示したい。嘲笑うPTAに、  我々の成長を示したい。  それがこの寄付金に対しての礼儀であり、恩返しだ」 秋空、いつの間にか握っていた拳を解く。 秋空 「少々熱くなってしまった。話を戻そう。  この寄付金の使い道を決めたい。話し会おう」 吹奏楽 「その寄付金は、  我々吹奏楽部が受け取るのが順当です。  全国大会5年連続出場、  この成績に方を並べるものは他にありません」 避球部 「ならばこの避球部も、名乗り上げさせていただきたい。  今年は新入生に弾平くんが入部しています。  弾平くんですよ。これは避球部のみならず、  球界全体に大きな影響を与えるでしょう!」 将棋部 「全国大会?球界?まったく小さい人たちだなぁ。  その点、将棋は文化だ。それ即ち国家。  将棋部への寄付は即ち国家規模でのメリット。  だれが受け取るのが良いか、明快ですねぇ」 茶道部 「みなさん、見苦しいですよ。まるで集る羽虫のよう。  お茶でも飲んで、落ち着かれては如何ですか。  十分な資金があれば、  茶道部が直々に手解きいたしますが」 送球部 「じゃ、あいだをとって送球部に」 吹奏楽 「ふざけないで、こっちは命かけてやってんの。  遊びじゃないから」 図書部 「そんなの個人の勝手です!  元々は学校の生徒のための寄付金です。  生徒全員の利益になるように、  図書部が受け取るのが理にかなっています。」 将棋部 「そっち学校。こっち国。完☆全☆勝☆利」 避球部 「こっちは弾平くんですよ?」 送球部 「じゃ、あいだをとって送球部に」 言い合いが続く。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加