95人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
「しかし、裏で新庄が居たとはな……。それは完全に俺達のリサーチミスだ。ハヤテが首謀者だとばかり思っていた」
「探偵っていうのも案外外すんだね」
「ああ、そうだな」
──それは嘘だ
蓮士の表情から壱人は何かを悟った。
フィリピン、極道、薬物。
何か見えない糸が確実に蓮士の行動を一つにしているはずだ。
この一事が、鏑矢蓮士の凄さだという事に後々気付く事になる。
8月も下旬に差し迫った夏の終わり。
青年は一つの現実を見せつけられた。
偽善なのか偽悪なのか、何が正しいのか何が悪い事なのか。
正義という言葉の曖昧さ、自分の無力感をここでも思い知った。
知った事は世の中に対する不信感と、大人になった親友の怖さ。
探偵という仕事が自分に合っているのかも分からない。
ただ、それを生業としている人間が確実に居る。
自分に出来る事が何なのか、青年は心の底からそれを知りたいと願った。
──これからの自分の行動次第で、蓮士も変わるかもしれない。
そう思えばすぐに辞める事なんて頭の中から消え去る。
3桁のIDを発端としたインターネット犯罪組織の狂乱祭は、こうして幕を閉じた。
1stストレンジャー『3桁IDの行方』
~完~
最初のコメントを投稿しよう!