鈴――前編

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鈴――前編

 ひどいのは五歳も年の差があることだ。  誰もいない教室で、 今までに何度繰り返したか知れないことを 鈴(すず)はまた思った。  幼い頃は、 ずっと側にいた結夜(ゆうや)を本当の兄だと信じていて、 年が離れていればいるほど頼れるような気がしていた。  最近まで年齢差など考えたこともなかったのだ。  それなのに、と今は逆に考えている。  離れていればいるほど、距離を感じてしまう。  鈴は机に突っ伏して溜息を吐いた。  普段であれば校庭から部活動の掛け声が聞こえてくるのだが、 今はテスト休みのため、残っている生徒はほとんどいない。  授業が終わると早く帰って勉強に励む (または余裕か諦めか、遊ぶ)。  いつもならば彼女もそうしていた。  家に遊びに来る結夜に勉強を教えてもらいながら話し込んだり―― (でも、今はそんなこと出来ない。  それに……今日は来てないだろうし)  窓の方へ顔を向けるが、彼女は空の色さえ見えていなかった。  先日のことばかりが頭に浮かんで消えず、 溜息が続いて漏れる。  部活の帰りに見た結夜。  二人の距離を思い知らされた一瞬。
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