鈴――前編

2/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 鈴の家に来ているとき 子供っぽい彼は十九歳の大学生には見えないのだが、 外で見かけたりすると印象がまるで違う。  友人と並んで歩き、 彼らと同じ表情で笑うその顔は鈴の知らない結夜だった。 (なんだろう、何かが違う。何かが……)  鈴には気付かず結夜は彼らと通りの向こうへ歩いていく。  しかし何かを突き付けられたような感触に、 彼女はしばらく佇んでいた。  遠ざかる結夜の背中を追うように見つめる。  声を掛けられなかった、と後で気付いた。  衝撃が何を表していたのか分からないまま日は過ぎ、 それを忘れて鈴は結夜と楽しそうに笑う。  けれどもつい先日、彼女はよりはっきりと打撃を受けた。 (男子だけだったら、気付かないままだったのかな)
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!