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俺が気がつくと、目の前には赤い大きな川があった。
その川はやけに流れが速くて鉄の臭いがしており、遥か彼方に水平線が見えていた。しかし、まったく見たこともない場所だった。
俺は何故かその川の畔で佇みながら、
ーーなんなんだ、いったい。
と思った。着ているレザージャケットやジーパンはボロボロである。だけど、ここまで何があったのかは記憶にはない。
俺は辺りを見回してからゆっくりと歩き出す。流れに沿って川を下り、砂利を踏みしめていくと、やがて渡し舟の船着き場を見つけた。
そこにはーー、
「あら、遅かったわね。」
と綺麗な女性がいた。俺はこの人を知っている。
「さぁ、行きましょう。」
ーー何処に?
「川の向こう側よ。」
ーーなぜ?
彼女は俺に向かって微笑みながら、
「私と死んでください。」
と言った。
後に俺は理解する、ここは三途の川であると。
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