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様々な職業があり、中でも上位職には優れたスキルがある。私はこのゲームの意図を知らず、長年続けてきた。
謂わばベビープレイヤーの一人、職業はナイトだ。銀の兜を頭に被り、同色系統の鎧の肩には天使をモチーフに羽が数枚あしらわれている。
プレイヤー名、水明こと私は剣を構えながら今正に戦いの真っ最中。
何と言うか、目前に立ちはだかる強敵は複数居て多様に武器を使いこなしている。
此れを人々は、モンスター名ゴブリンと呼んだ。しかし何故下級の筈なのに強敵と言うのかと説明すると、コイツらがボスだから。
メンバーは、居ない。単刀直入に言おう。自身はソロ狩り派、そして案の定沢山過ぎる敵と遭遇して窮地に立たされている。
だが好都合な事に、この先にはワープポイント。出口があった、急いで周りに人が居ないのを確認し。即座に其所へ逃げ込む、他のプレイヤーが居れば大変な事になるのはゲームの事情。
振り返り、ふとゴブリンを視やれば奴等は不敵に笑いながら小馬鹿にするだけ。
「何だ、大したこと無いわね」
歩きながら、私は逃げ切ったとばかりに油断していた。矢先、牛らしき二足歩行のモンスターが忍び寄る。
「っ、何でミノタウロスが居んのよ!」
口より先に、足が動き。気付けば街の入り口を目指し、全力疾走していた。
酷い目に合って、少々体に疲れを感じる。見ると体力ゲージ、HPが減っていっていた。
息が切れ、走っている事に苦を感じ出す。しかし逃げる他無い、こんな所でやられる訳にはいかないのだ。
心臓が激しく脈打つ、突如孤独感に苛まれては徐々に意識も遠退く。最早体力は十に限界を達し、足が縺れ始めた。
ゴブリンから受けた、傷口が痺れる様に痛む。
プツンッ、そんな妙な音がして私は意識を手放す。不意に体が倒れ、力さえ入らなくなった。
――重い、瞼をゆっくり開ける。
見えた景色は、誰の腕に支えられている事だけ。恐る恐る見上げると、誰かが魔法を詠唱しながらにミノタウロスを討伐していた。
不思議と声が出ない、何かが可笑しい事に気付くもまだ体は怠い。
再び意識が遠退く、地毛である白い髪を風に靡かせながら何者かが必死に呼び掛けている。
「おい、確り……ろ」
(誰…なの…?)
言葉が出ない、なのにその容姿は凄く綺麗で思わず見とれてしまう程にカッコいい。
例えるなら、王子様だろうか。
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