第1章 起動

4/17
前へ
/120ページ
次へ
容姿端麗、服装はシルクのローブに手には魔術師特有の手袋を着け。見え隠れする様に細い白い髪が、時折顔に掛かってくすぐったい。 其れくらいに至近距離で、此方を心配そうに見つめる表情はとても悲しげだ。 (あれっ?) 「全く、酷い事をする人も居たもんだ……」 顔に手を触れ、そっと土を払われる。今自分はどんな格好に、と言うか何故か周りが大きく見える気がした。 私、縮んでいる。いやそんな馬鹿な話しある訳が無い、きっとサーバー接続にバグが生じたとかだろう。 「でも、何で人形が?」 (えっ、人形って何の事……) 客観している、そう言った感覚がある時点では私の意識は現実に残っている筈。 とりあえず、話し掛けてみるしかあるまい。意を決して、彼の方に視線を移す。 「あっ、動いた。もしかして君はロボット?」 「違うっ、私は人間!」 縮んでいるせいか、人形等と視間違われてしまい少々苛立つあまり声をあらげる。 何で、親指姫みたくなってんのよ。本当嫌になる、なのにこれってある意味ラッキーかも。 何て考えていたら、ひょいと持ち上げられ。いつの間にか頭に乗せられていた、何なんだこの状況。 軈て、異様なくらいに次々に現れるモンスターを素早く魔法で倒す彼。 早々に、平原を駆け抜け。けれど私を確りと落ちぬように配慮をしながら、必死に出口を目指していた。 暫く互いに無言のまま、私達は街に戻る事を考える。だがそう安易にはいかない、目の前に突然大蛇が現れた。 ヤマタの大蛇が、此方を文字通りに蛇睨みしている。恐ろしい血相で、丸呑みしてしまいそうな大口が開かれ。一瞬躊躇うも、彼は直ぐに魔法を駆使した。 「ハァッ、ハァッ。だいぶ手こずった、けど俺なら大丈夫だから。心配すんなよ……」 「でもっ、怪我してるじゃない!」 不安が募る、この先無事に街があるとも思えない。もしかすると、もう安全地帯等無いのかも知れないと考えてしまう。 一時、ログアウトした方が良さそうだ。しかしこの姿で戻れば、必ずしも現実に支障が生じている。 戻れない、帰る選択肢すらも躊躇してしまいたくなった。 片手には杖、恐らくは膨大な知恵の詰まったソロモンだ。全てを熟知出来る、伝説の魔法具。 古来より伝わりし、古の杖は現代のゲーム何かにもよく使われている。 街に戻るか、其れとも彼と行動を共にしておくかのどちらかを選ばなくては。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加