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容姿端麗、服装はシルクのローブに手には魔術師特有の手袋を着け。見え隠れする様に細い白い髪が、時折顔に掛かってくすぐったい。
其れくらいに至近距離で、此方を心配そうに見つめる表情はとても悲しげだ。
(あれっ?)
「全く、酷い事をする人も居たもんだ……」
顔に手を触れ、そっと土を払われる。今自分はどんな格好に、と言うか何故か周りが大きく見える気がした。
私、縮んでいる。いやそんな馬鹿な話しある訳が無い、きっとサーバー接続にバグが生じたとかだろう。
「でも、何で人形が?」
(えっ、人形って何の事……)
客観している、そう言った感覚がある時点では私の意識は現実に残っている筈。
とりあえず、話し掛けてみるしかあるまい。意を決して、彼の方に視線を移す。
「あっ、動いた。もしかして君はロボット?」
「違うっ、私は人間!」
縮んでいるせいか、人形等と視間違われてしまい少々苛立つあまり声をあらげる。
何で、親指姫みたくなってんのよ。本当嫌になる、なのにこれってある意味ラッキーかも。
何て考えていたら、ひょいと持ち上げられ。いつの間にか頭に乗せられていた、何なんだこの状況。
軈て、異様なくらいに次々に現れるモンスターを素早く魔法で倒す彼。
早々に、平原を駆け抜け。けれど私を確りと落ちぬように配慮をしながら、必死に出口を目指していた。
暫く互いに無言のまま、私達は街に戻る事を考える。だがそう安易にはいかない、目の前に突然大蛇が現れた。
ヤマタの大蛇が、此方を文字通りに蛇睨みしている。恐ろしい血相で、丸呑みしてしまいそうな大口が開かれ。一瞬躊躇うも、彼は直ぐに魔法を駆使した。
「ハァッ、ハァッ。だいぶ手こずった、けど俺なら大丈夫だから。心配すんなよ……」
「でもっ、怪我してるじゃない!」
不安が募る、この先無事に街があるとも思えない。もしかすると、もう安全地帯等無いのかも知れないと考えてしまう。
一時、ログアウトした方が良さそうだ。しかしこの姿で戻れば、必ずしも現実に支障が生じている。
戻れない、帰る選択肢すらも躊躇してしまいたくなった。
片手には杖、恐らくは膨大な知恵の詰まったソロモンだ。全てを熟知出来る、伝説の魔法具。
古来より伝わりし、古の杖は現代のゲーム何かにもよく使われている。
街に戻るか、其れとも彼と行動を共にしておくかのどちらかを選ばなくては。
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