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「先ず歓迎するね、ようこそ。俺等のギルドへ!」
『夢ノ乱舞ギルドへ!』
元気な威勢の良い声が、酒場内に響き渡ると。私は途端に耳を塞ぐ、背丈が小さくなっている為に結構耳に響く。
どうやら、私を此所に加入させたいらしい。まだギルドに入るとは言ってはいないとは思ったものの、やはりこのままでは不便だ。
ここは、素直に受け入れた方が良さそうに思えた。
其れが現在状況下に置かれた、自身に対する唯一の救いだろう。
周りには、弓使い(アーチャー)や侍等様々な職業の人達が集っていた。
けど、魔術師はこの中でギルドマスターの彼一人だけの様。
そう言えば、まだ名前を訊いていない事に気付き私はおずおずと訊ねた。
「あのっ、名前訊いて良い…です…か?」
「あぁ、名前の紹介がまだだった。俺は白夜(ビャクヤ)宜しく」
笑顔を浮かべる彼の姿に少し安堵する、水明は緊張しながらに小さな声で宜しくと軽く挨拶をした。
因みに、先程から酒を飲んでいる男はバッカスと言うらしい。
強い、アルコールの入った酒の名前に私は面食らった顔をする。どうせなら、有名なウオッカとかにすれば良いのにと思いながら苦笑を浮かべた。
カウンターに居る、バーテンダーは。パーソナルコンピューター(CP)だ。
名前は一応あって、ウォル。殆どのギルドの人は、この名で呼んでいる。
其れにしても、随分酒の臭いが強い。多分だけれど、私以外は皆が成人なのだろう。
「あっ、此所はギルド本部じゃないよ。向こうにあるから、一応だけど此方にもメンバー居るしね。紹介だけしとこうかなと……」
「どうりで、酒場っぽい筈ね」
苦笑いし、私は再び白夜の頭に乗っけられる。片手で支えられながら、ゆっくりとした歩幅で進む彼。
酒場を出て、街行く度に周りからは好奇の眼で視られるも何とか無事にギルド本拠地へと辿り着く。
内装は至って洒落てもいない、どちらかと言えば普通だけれど結構頑丈そうだ。
しかし入ってみると、意外にも明るく清潔感漂う空間。皮張りの数人が座れるソファに、埃すら見当たらない木製のローテーブルと並ぶ椅子。
「どう?」
「うわぁ、凄い…これ…がギルド!」
初めて見た、あれだけソロ狩りに夢中になっていた頃には想像すら付かなかったギルドに思わず目を輝かす。
椅子には、数人の他のプレイヤーが座りながらトランプを手にポーカーを楽しんでいた。
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