衝撃

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 何を言っているのか、理解が出来なかった。 確かに、今日はまだ先輩の姿を見ては居ないが、人身事故で来るのが遅れているだけのことではなかろうか。 それに先輩は簡単に死ぬような人じゃない。 事故にあったと言っても、車のサイドミラーがあたっただけで大したことないというのを笑いながら話していたのを覚えている。 そんな事を思い出している内に、おはようございますと言って出社してくるに決まっている。  そう思いながら、自分の横のデスクを見ていた。 しかし、その日から先輩が私の目の前に現れることはなかった。  部長は私に先輩の死を告げると、その足で社長室の方へ行ってしまった。 私以外にも、口に手をあてがって嗚咽を堪える者、目頭を押さえて机にうつ伏せる者、その場に崩れてしまう者と、皆一様にショックを抑えることが出来ず、今日の業務はそれまでとなった。 デスクトップには、一件のメール通知だけが表示されていた。
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