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「橘」と自分の名前を呼ばれて振り返ると、不安げな上野部長の姿がそこにあった。
今の私の顔を見て、その後の言葉を引っ込めた。
「橘、まだダメか?」
先輩と仲がよく、隣のデスクであった私の落ち込み具合は、会社の誰よりも酷かった。
取り繕うことも出来ず、会社へ顔を出すのも辛かった私に、休職を提案してくれたのは他でもない上野部長だった。
「すいません。ご迷惑をお掛けしています」
絞りだすような声で言った。
アルコールと毎晩泣きはらしたこともあって、一言を発するだけでものどが痛い。
本当に痛いのは喉ではないのだが、他の痛みで我慢しなければ、自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
「今日、空けとけ」
上野部長は、私の頭を軽く撫でると、会社の上役たちの元へと戻っていった。
その気遣いが、今の私には嬉しくもあったが、同時にとても申し訳のない気持ちになって、このまま消えてしまいたいと思った。
部長だって辛いはずなのに、私がこんなことで、本当に申し訳ない。
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