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空と時の距離を縮めなければ、
いつまで経っても、この腕に彼女は戻ってこない。
青年の声なき言葉が、静かに続く。
それを聞き、しばし青年をじっと見詰めていた老人が
再び淡い吐息を零した。
『ならば、これで終いにしよう。
そして、最後にもう一度だけ言っておく。
お前に与えられたチャンスは、何もかもが一度きり。
道を開くことが出来るのは、己のみが頼みだ』
はい。
青年は、眼差しに力を込め静かにうなずいた。
『成功を信じる』
ありがとうございます。
輝くように頷く彼の頭上を、再び細い光の線が、遠く、遠く流れていった。
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