第1章

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 男は剣を鞘にしまった。  落ち着いて見るとかなり大きな剣だった。  はぁ、とため息をついてから、男は 「もう出てきていいぞ」と言った。  おずおずと、赤レンガの壁の後ろから出る。  男はぐるりと振り返ってこちらを見た。 「怪我はしていないか?」 「…は、はい。ありがとうございます…」    ああ、短い髪も切れ長の目も、吸い込まれそうなほど真っ黒だ。  歳は私より少し上そうな印象。  18ぐらいだろうか。  身長は高く、細身ですらっとしている。  一番の謎はどうして、騎士の格好をしているくせに、私を助けてくれたのか、ということだけど。  そんな事を考えているうちに、男は騎士の制服である鎧をカシャカシャいわせて、こちらへ近づいてきた。  そして、すとんと私の横に腰を下ろした。 「え…?」 「え、とはなんだ」  男がじっとりとこちらを見た。  そうだ、油断している場合じゃないんだ。  もしかしたら、助けておいて、そのまま殺されてしまうかもしれない。  音をたてないようにして、男から少し離れた。
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