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男は剣を鞘にしまった。
落ち着いて見るとかなり大きな剣だった。
はぁ、とため息をついてから、男は
「もう出てきていいぞ」と言った。
おずおずと、赤レンガの壁の後ろから出る。
男はぐるりと振り返ってこちらを見た。
「怪我はしていないか?」
「…は、はい。ありがとうございます…」
ああ、短い髪も切れ長の目も、吸い込まれそうなほど真っ黒だ。
歳は私より少し上そうな印象。
18ぐらいだろうか。
身長は高く、細身ですらっとしている。
一番の謎はどうして、騎士の格好をしているくせに、私を助けてくれたのか、ということだけど。
そんな事を考えているうちに、男は騎士の制服である鎧をカシャカシャいわせて、こちらへ近づいてきた。
そして、すとんと私の横に腰を下ろした。
「え…?」
「え、とはなんだ」
男がじっとりとこちらを見た。
そうだ、油断している場合じゃないんだ。
もしかしたら、助けておいて、そのまま殺されてしまうかもしれない。
音をたてないようにして、男から少し離れた。
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