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男はそんな私を見て、きっぱり言う。
「俺は、暴れ騎士ではない」
ギクッとして彼を見た。心を読まれたのかと思った。
彼はまっすぐ前を見ている。
「うそ…」
「嘘はつかない」
即答で断言。
相変わらず黒目は前を見据えている。
はたから見れば誰としゃべってるの?と思うほどに、こちらを見ない。
しばらく無言が続いた。
その間、私は彼の横顔を見つめていた。なぜか目が離せないのだ。
彼の顔を見ると、何かが頭の中でひっかかる。
何だろう。この違和感は。
と思った瞬間、黒目がぐるっとこちらを見た。
びっくりして目をそらしそうになる。
「なんだ」
「な、なんでもないです」
「なら、そんなにこちらを見るな」
またバレた。
男は私からふいっと目をそらし、また前を見てボソリと呟いた。
「あのときの面影もないな、この街は」
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