第1章

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 あのとき? 「この街に来たことが…?」 「7年前まで住んでた」  私が8歳ぐらいの時か。フェブリアが一番平和だったとき。 「2年に一度のフェブリア祭の年だったのに、と拗ねていた記憶がある」  拗ねる!  さっきからにこりと笑いもしないこの男が? 「何を笑っている」 「なんでもないです…ふふ」  思わず口の端から笑みがこぼれる。久しぶりに笑った気がした。 「…笑うなら勝手に笑え」  男は、恥ずかしくなったのか顔を少し赤らめて立ち上がった。  そして、おもむろにさっき叩き折った2つの剣先を手に取った。   「噂には聞いていたが…まさか本当に暴れ騎士に出会うとは思わなかった」  「じゃあ、あなたは…」 「何度も言うようだが、断じて暴れ騎士ではない」  男はため息をついて、ちらりと後ろを見た。 「生憎、俺はああいう奴らを倒すのが仕事だからな。ところで、いつまでそこで見てるんだ。早く出てこい」 「え?」 「あー、やっぱりばれちゃうよね、君には」  上からアルトのよく通る声が聞こえてきた。  見上げると、赤レンガの壁の上から飛び降りる3つの影。
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