第1章

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 三大都市リングウ、コルネリ、ポルドーの首相たちに、心はあるのだろうか。  この通達を見たときに、本当にそう思った。  私たちが今まで大事にしてきたものを全て捨てろというの?  この街が世界から消えたって、あなたたちはどうでもいいというの?  三大都市には、優れた自然、文化、産業がある。私たちの街とは比べものにならない人口がいる。  敵わない。そう思ったフェブリアの街の人達は、みんな三大都市に引っ越していった。  でも、私はその三年前にお父さんもお母さんも亡くしていた。  病気がちのおばあちゃんと、三大都市に行けるわけもなく、フェブリアに残るしかなくなった私を待っていたのは、最後の肉親であるおばあちゃんの死と、取り壊された赤レンガの家だった。 「うそでしょ…うそだ」  あのとき、家の前で泣き崩れた私は、ずっとそう繰り返していた。
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