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『今でも愛しているのに、彼女が他の男の隣で笑っていても平気なのか?』
リュウジが聞くとアキラは力なく笑ってみせた。そしてちらりとリュウジを見た。
『愛してはいけない女性だった。それが分かっていたのに俺は求めてしまったんだ。彼女には俺の記憶はない。だから笑っていられるんだ。俺は彼女が笑えるのならそれでいい』
きっぱりと言い切ったアキラの言葉に偽りはなかった。
リュウジは胸が苦しくなるのを堪えられなかった。
リュウジはアキラが人間の女性を愛したことを悔いることを望んでいる。アキラが悔いれば、神からの許しが出るかもしれないのだ。だがアキラは彼女を今でも愛し、彼女の幸せを見守ることを望んでいるようだった。
アキラにとってどちらが幸せなのか。今のアキラを見ているとそれが分からなくなってしまう。
『そう言えば…』
アキラはそう言うとリュウジに体を向けた。
『俺はアキラだ』
アキラが手を差し伸べてくるのを見てリュウジも手を伸ばす。
『リュウジだ』
そう返しながらリュウジは目を細めた。
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