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アキラはリュウジのことを覚えていない。自分の記憶が消されることは聞いていたが、こうして目の当たりにするとショックは隠せなかった。
『お前にも愛した女性がいるのか?』
優しく問いかけられたリュウジはアキラから目を逸らした。リュウジは何も言えなかった。アキラは手を放すと小さくすまないと呟く。もう一度彼に目を向けたアキラは言った。
『言いたくなければ話す必要はないさ』
『…』
こうして同じ時を過ごすリュウジとアキラ。毎日毎日アキラは彼女を見守り、そんなアキラをリュウジが見つめる。
次第にリュウジの中にアキラへの罪悪感が膨らんでいく。リュウジはいわばアキラを監視しているようなものだ。自分はアキラを裏切っているのではないだろうか…そんな思いが浮かび始めていた。
そしてある日運命が動く。アキラの愛した女性の寿命が尽きる日が来たのだ。彼女の最期を看取るアキラを複雑な気持ちで見つめるリュウジ。
しかし、どこかで安堵していた。これでアキラはこの世界から解放されるとリュウジは信じていたからだ。
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