第1章

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『人間の中には神に与えられた運命を放棄するものが多い。それは罪以外の何物でもありません』 確かに神の教えでは自らの命を絶つことは罪であると説かれている。リュウジはガブリエルの言葉に頷いた。 『今回のアキラ様のように愛する者のために運命を放棄する者をあの場に導くのです。そして己の愚かな行動に罰を与えるのです』 『…』 リュウジは言葉が出なかった。熾天使ラファエルの名を持つリュウジは人々に癒しを与えることが役目。ガブリエルはそのリュウジに人間に罰を与える役目を担えと言っているのだ。 『同じような者たちを目の当たりにすれば、アキラ様もご自身の過ちに気付かれるでしょう。リュウジ、これはアキラ様のためなのです』 優しく言い聞かせるようなガブリエルの口調にリュウジは俯き考え込んでいた。 『人間に黒き衣を纏わせる権利をあなたに与えます。そしてアキラ様にも…』 その言葉にリュウジは顔を上げた。 『アキラ様は…』 『あの方はきっとそうせずにはいられないでしょうがね…』 そう微笑むガブリエルの顔は恐ろしい程に美しかった。まるで狂気さえ感じるようなその微笑みにリュウジは体が竦むのを感じた。
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