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暗い世界に戻されたリュウジは天を見つめた。まるでこの世界を覆う黒い雲がリュウジの心までも覆っていくようだった。重い足取りで近づくリュウジにアキラが顔を向ける。
『地上に降りていたのか?』
『そんな所だ…』
力なく答えたリュウジにアキラは、そうかと言って顔を戻した。アキラの大きな背中を見つめリュウジは心の中で泣いていた。アキラを守りたくてここについてきた。しかしリュウジがしていることは本当にアキラのためになるのだろうか?
自身にそう問いかけても答えは出ないまま時が過ぎていく。
リュウジはガブリエルに言われた使命のことを考えながらも、アキラの事が気にかかりそれを行えないでいた。
アキラは今でもこの世界を見つめて微笑みを浮かべている。
そんなある日、リュウジがいつものようにアキラを見つめているとアキラが息を飲んだことに気付いた。
『…』
目を向けるとアキラはその瞳を大きく見開いている。
『アキラ…』
呼びかけたリュウジはアキラに手を伸ばす。だがその手は彼の腕を掴むことなく空を切った。
アキラは一瞬早く一歩を踏み出し、その姿はリュウジの前から消えていた。
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