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リュウジは俯き拳を握りしめた。アキラはリュウジを熾天使ラファエルの座につけてくれた恩人でもある。そのアキラのために何もできない自分を不甲斐なく感じていた。
『リュウジ、あなたはアキラ様と共に行きなさい。そしてアキラ様の助けとなってほしいのです』
『助け?』
リュウジは勢いよく顔を上げた。その表情には希望が浮かんでいるようにも見えた。
『神はアキラ様が人間を愛したことを後悔されるのであれば慈悲をくださるでしょう。あなたはアキラ様のそばで、あの方が悔いるのを確認してほしいのです。アキラ様が天界に戻られるには、それしか方法はありません』
ガブリエルはそう言うとリュウジに近づき彼の肩に手を置いた。そして柔和な表情を作ると優しさをこめた声で言った。
『あなたは「癒しの天使」きっとアキラ様の力になれるでしょう』
『分かりました』
リュウジはガブリエルに感謝をこめて頭を下げた。そんな自分を見下ろす熾天使の口許が妖しく歪んでいたことにリュウジは気付いていなかった。
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