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アキラが禁を犯してからリュウジは彼に一度も会っていなかった。いや正確には会わせてもらえなかった。ガブリエルは頑なにアキラとの接触を許さなかったからだ。
リュウジはアキラに近づいて行く。彼の視線が一点を見つめていることが気になり、その視線を追う。アキラの見ている先には一人の女性がいた。
『幸せそうだ…』
アキラは微笑んでそう呟く。その表情を見てリュウジは驚いていた。とても穏やかで、何より彼自身が幸せそうに見えたからだ。
その女性は一人の男と並んでいた。その身に純白のドレスを纏って…
それを見てリュウジは悟った。彼女もまたアキラとの記憶を奪われたのだと…だがアキラはそんなことは気にしていないようだった。
『彼女を愛していたのでは?』
リュウジはそう聞いていた。
『愛していた…と言うのは違うな。俺は今でも彼女を愛しているから…』
アキラは少しだけ俯くと寂しそうに口許を緩めた。その声からも彼の想いが伝わってくるようだった。
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