第1章

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「好きです。私とお付き合いしてください」  緊張と愛情。彼女の感情の全てが、その言葉がつまっていた。もし言葉が宝石ならば、これほど綺麗な言葉はない。そしてその宝石は人を強く魅了する力も持っている。もちろん、魅力を引き出すのは、言葉だけではない。真っ直ぐな目、緊張の手、震える唇…。その全てが、輝かしい宝石だ。  だが、時としてその宝石も受け入れらないこともある。相手の言葉は簡潔だった。 「ごめん。付き合えない」 「そう」  その返答は、彼女の心の奥を傷つけていた。だが、彼女は笑顔を絶やさない。全てはこの告白を綺麗なまま、終わらせるために。 「ごめん」  そう言い残して相手の男は姿を消した。彼女はその姿を最後まで見届ける。学校の中庭で夕焼けに背を染めるその姿を眺め続けた。そして完全に彼の姿を最後まで見届けた。彼女は袖で涙をぬぐうと、ポケットから小さなストラップを取り出す。それは縁結びのストラップだ。それをジッと見つめ、握ったまま校内へ向けて歩きだした。校内に入ると、階段を上り二階の放送室へと向かう。そして放送室のノックし、中に入った。 「あ、あき先輩。…どうしたんですか!目が真っ赤ですよ!」  中に入っていた女子が心配して女の子に駆け寄ってきた。先輩と呼ばれた女の子は、後輩に心配をかけないように笑顔で返した。 「ごめん、まゆみちゃん。なんでもないの。心配しないで」 「心配しないわけがないじゃないですか!二人きりの部活の先輩と後輩ですよ!それは恋人より深く、家族より固い絆があるんです!なんでも言ってください!」 「そう言ってくれて、本当にうれしい…。うれしいんだけど。ごめん。私、部活を辞めることにした」 「なんで!」  絶望というべき表情を見せるまゆみに、あきは申し訳なさそうに笑った。
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