2人が本棚に入れています
本棚に追加
1週間後、俺は周防と一緒に食堂に来ていた。
「まぁでも、レポート提出できたし良かったんじゃないのか?」
「まぁな。」
1週間前のあの日、レポートは全く進まなかった。
進めようと思えば思うほど、綾世教授の言葉が頭から離れず、集中できなかった。
結局、周防に半分以上手伝ってもらってなんとか提出できたわけだけど。
お礼に奢るからと言って断ろうとする周防を無理やり連れてきて、今に至る。
「...にしても珍しいな。お前がレポート進まないなんて。」
「...俺もそう思う。」
「自慢か?」
「いや、違うけど、いつもならこんなことないのになーと思って。」
「...それもそうだな。」
『いつもなら』という言葉が最近頭をよぎる。
人に執着してレポートが進まないなんて、『いつもなら』絶対ありえない。
そう思うほど、今の俺は俺らしくない。
ほんとにどうしたんだろ、俺。
「何か悩んでいるみたいだな。」
「ん~?ちょっとな。」
「話を聞いてやりたいが、次は講義が入っているから、これで失礼する。」
もう行くのか?もっと頼めよ、俺の奢りなんだし。」
周防が食べていたのは食堂のメニューの中でも低価格な塩ラーメンだった。
俺を気遣ってなのか、いつもセットで注文している半ライスや半チャーハンがない。
「いや、遠慮しておく。友人に飯をたかるほど、俺は困ってないからな。」
そう言って周防は食堂を去っていった。
...漢前なヤツだ。
周防は(本人は気づいていないが)密かに女子から人気がある。
いわゆる『漢の中の漢』ってところが女子にウケたんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!