窓辺の君

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窓辺に立っていた彼は、触れたら消えてしまうような、そんな儚さを纏っていた。 ただ空を眺めているだけなのに、とても絵になる。そんな彼を俺はずっと立ち止まって見つめていた。 「芹沢?どうかしたのか?」 ずっと立ち止まっている俺を不審に思ったのか、隣を歩いていた周防が声をかける。 「周防、あそこに立ってる人って...」 周防の方を見ながら、彼が立っている方を指差す。 「人?どこに?」 「え?」 指差した方を見るが、確かに誰もいない。 「確かにさっきまでいたのに...」 「幽霊でも見たんじゃないのか?」 そんなはずはない。確かに儚げな雰囲気は纏っていたが、幽霊とか、そんな風には思えなかった。 (まさか、な...) 「それより芹沢、早く行かないと次の講義遅れるぞ。」 「あ、ああ...」 俺はなんとなくすっきりしないまま、芹沢と共に歩き出した。
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