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外と内
昔…小学校に上がったすぐの夏休みに、私は両親と共に祖父母の田舎に泊まった。
二泊三日の小旅行。楽しみにしていたけれど、実際赴いてみると、祖父母の田舎は何もなさすぎる土地だった。
自然に囲まれていると言えば聞こえはいいけれど、正直、それらが珍しいのは最初だけ。そもそも、祖父母の家の近くには、同じ年頃の遊び相手が一人もいないのだ。これでは退屈するに決まっている。
子供心に、三日の辛抱と考え、近所を散策することで暇を潰していた。
あの女の子と出会ったのはその時だった。
町外れにある小さな神社。古ぼけた鳥居と祠だけがある神社の、狭い境内にその子はいた。
「そこで、何してるの?」
おずおずと声をかけると、女の子は驚いたような顔で私を見た。でもその顔をすぐ笑いに変えて、手招きで私を呼んだ。
「一緒に遊ばない?」
退屈しすぎていた私に、その誘いはとても嬉しいものだった。
招かれるままに駆け寄り、私は女の子と境内で遊んだ。内容は、今となっては思い出せないが、ともかく楽しかったことだけは鮮明に覚えている。
だから、夕暮れが迫り、そろそろ祖父母の家に戻らなければと思った時、相手との別れを辛く感じた。
それでもずっとここにいたら、両親も祖父母も心配して、あちこち私を探し回るだろう。
「もう、帰らないと」
そう切り出すと、女の子はとても淋しそうな顔をした。それがとても申し訳なくて、反射で次の言葉が出る。
「明日も、また来るから」
「本当?」
「うん」
頷くと、相手の顔には嬉しそうな笑みが戻った。
「帰らないの?」
「…いいの」
鳥居の所まで一緒に歩いたけれど、女の子はそこで足を止めてしまう。
もしかして、この神社の子なのかな? それとも、後で誰かが迎えに来るのかな?
理由は判らないけれど、まだここにいるというならば、それを遮る必要はない。
ばいばい、また明日。
手を振って駆け出す。
明日はもっと早くから来よう。そしてあの子といっぱい遊ぶんだ。
* * *
今日は朝から神社に行った。
昼間で遊んで一旦分かれ、ご飯を食べて戻って来る。
本当に、この近所には私達くらいの子供がいないらしく、道すがらに同年代の子と会うこともない。
あの子はいつも、あそこで毎日一人でいるのかな?
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