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さすがに学校には行っているだろうから、そこには友達くらいいるだろうけれど、夏休みは一人ぼっちで過ごしているのかもしれない。
そう思うと、女の子が可哀想で、その日も夕暮れまで目いっぱい遊んだ。
その帰りがけ。
「明日は? また来れる?」
「明日は…」
頭の中で明日の予定を考える。
お昼前には帰るって言ってたから、朝、今日と同じくらい早起きをしたとしても、遊べる時間は三時間くらいだ。
それでもいいなら…。
「それでいいから。明日も来て」
事情を告げると、構わないと女の子は言った。
遊び相手なんて他にいないから、必死になる気持ちはよく判る。
「また明日」
「きっとだよ」
約束をして私は祖父母の家に戻った。
用意されていた風呂に入り、夕食を食べ、さっさと布団に転がり込む。
お母さんには、明日も今日くらいの時間に起こしてと言っておいた。
早起きして、少しでも長くあの子と遊ぼう。
…そう思っていたのに。
「何で起こしてくれなかったの?!」
「お母さん、何度も起こしたわよ」
目が覚めてびっくりした。起きたらもう九時を過ぎていたからだ。
そろそろ帰る支度をしなさいという言葉を無視し、朝ごはんも食べずに神社へと駆け出す。
この時間じゃ、もう一緒に遊ぶのは無理だ。でもせめて、ごめんねとさよならは伝えたい。
境内に駆け込み、辺りを見回すと、お社の所に女の子はいた。
私を見て嬉しそうに駆け寄って来る。その表情を見ると申し訳なさが膨らんだけれど、もう、時間がない。
「ごめん」
合宅を下げると、女の子は不思議そうな目を私に向けた。その相手に、本当はもっと早く来て少しでも遊ぶつもりだったけれど、うっかり寝過ごしてしまったこと、そのせいで、今日はもう時間がなくなってしまい、遊べないことを訴えた。
「今日は、遊べないの?」
「うん」
「じゃあ、明日は? 明日は来れる? 遊べる?」
「…ごめん。僕、もう、家に帰らなきゃならないんだ。だから、明日はもう来れないし遊べない」
相手を見られず、うつむいて、私はやっとそれだけを口にした。
お別れは伝えに来れたけれど、遊べるという約束は破ってしまった。それが申し訳なくて女の子の顔を見られない。
どのくらいそそのままでいただろうか。
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