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「ごめん!」
その一言を叫ぶと、私は大きく頭を下げた。そのまま顔は決して上げず、神社に背を向け走り出す。
程なく祖父母の家に着くと、皆が何事かと聞いてくる。それに曖昧な返事をし、総てをうやむやにするように私は祖父母の田舎を離れた。
* * *
あれから何度も祖父母の家は訪ねた。
その折に、あの神社のことをそれとなく聞いてみたが、宮司さんが絶えて久しい神社で、地域で掃除などの管理だけはしているが、祖父母も近所の人も詳しい由来は知らないらしかった。
あの子が何者なのか、今でもあそこにいるのか、すっかり怖気づいて神社に入れない私には、それを知る術はない。
それでも、久方ぶりに祖父母の田舎を訪れたから、せめてもと、神社の側まで立ち寄った。
そこから、鳥居の向こうへ紙飛行機を投げ入れる。
近所の人が掃除に来た時に見つけたら、きっとゴミだと思うだろう。でも、その前にあの子が受け取ってくれることを信じている。
飛行機の内側には、ごめんとだけ書いた謝罪文。臆病な私は、もうこれ以上神社の近くに寄れないけれど、改めてお詫びの意思を届けたい。
神社の外から内へ。こちらの私から向うのあの子へ。
ごめん
も う い い よ
鳥居の奥。ここからは見えない境内の向こうから、そう、返事が聞こえた気がした。
外と内…完
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