第1章

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「……はぁ…」 騒がしい男子校には不釣り合いなアンニュイな表情を浮かべているのは、この物語の主人公、小柳羽瑠(コヤナギハル)だ。 本人は、平凡な自分には似合わない女の子のような可愛らしい名前がいまいち気に入っていないが… ”永遠の少女”である母親には逆らうことが出来ず既に人生も17年目。そして、このため息もその永遠の少女が原因のものだったりする。 ことは2週間前に遡る。 「ねぇ、羽瑠。お願いがあるんだけど…」 「何だよ急に…」 美しい人の皮をかぶった傍若無人な母親からの、いつにない猫なで声に、羽瑠は鳥肌を立てた。 「あのね…明日から学校辞めて欲しいの。」 「……母さん?」 母親に振り回されることは今までも数え切れないほどあったが、今回ばかりは度が超えている。 「聞き間違いだよな?息子が苦労して入った高校を辞めろだなんて言う親がどこに…」 「ここにいるわよ?…ねぇ、お願い羽瑠。お母さんね、お父さんとフランスで暮らしたいの…。羽瑠のことはもちろん大事よ?でもね、結婚してからお父さんと一緒に暮らした期間なんてわずかだったわ。お母さん寂しくて…。」 「母さん…」 騙されないぞ、オレは誰よりもこの女の恐ろしさを知っている… おおかた長期の海外旅行でもしたくなったんだろう。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!