薫る風

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僕がいなくなっても、世界はまわる。季節は巡って、また秋が来た。彼女はそれを、ちゃんと感じてるのかな。 A「さくっ、さくって、音がするね。落ち葉のカーペットができてるんだね、翔太郎」 彼女が盲導犬の「翔太郎」に話しかける。僕がつけた名前。というか僕の名前。1年前、僕は病気で倒れたとき、すぐにこの子を彼女の元へ送った。これからは彼女の目でいられないんだと、悟ったから。 紅葉をカラカラとそよがせて、飛び立つ鳩たちの羽音を乗せて、彼女に秋を知らせる。ひんやりとした風を感じたのか、彼女はいつだったか僕が贈ったマフラーに顔をうずめた。 A「また、秋が来たんだね」 そうだよ。 今、くしゃん、とくしゃみをした君を暖めたい。 でもね、風邪を引いてほしくはないから、少し後ろへ離れているよ。 B「いつも、見守っているからね」
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