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気づけば、路上に打ち捨てられていた。
……何も思い出せない。
いったいボクは誰なんだ?
必死で悩んでいると、急にあたりが暗くなった。
視線を上げるとそこには背の高い少女が……
「ごめんなさい。今の私には、何もできないの」
――なんだって? 君はいったいボクとどういう関係に……
「お願い信じて。必ず戻ってくるから」
――行かないで!
叫びたいのに声が出ない。
ボクだけ残された。
身動きも取れない。
もうこのまま死ぬしかないのか……
やがて……
「待たせてごめん」
少女は戻ってきてくれた。
「おせーよ! 早く始末しろよな」
男の声がして初めて、すぐそばに少年がいたことに気づく。
「ごめんね。うん○バッグ忘れてたのに気づかなくって」
微笑みながら、少女は汚いスコップをボクに向けて突き出してきて……
ようやく悟った。ボクに記憶がない理由を。
ボクは、生まれたての犬のフンだった。
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