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「毎年同じさ。何せデータなんだからな」
人口の増え過ぎた地球では、全ての人や物がデータ化され保存された。
荒廃した地上が元に戻るまでと言うが、その見込みは何時になるのか。
だから悪態が出る。
変わらない景色の繰り返しに。
「同じじゃないよ」
屈託のない微笑み。
どうしてだ?
同じルーティンで繰り返される、一年、十年、百年。
去年と同じ天気、同じ景色、同じ場所、同じ数の鳩の群れ。
「同じさ。データは変わらない」
「私達の心は変わるよ」
「当たり前だ。そうじゃなきゃ、誰も生きてる何て……」
更に繋げ様とした言葉は、急に走り込んで来た犬に断ち切られる。
途端、一斉に鳩が羽ばたいた。
白い翼が木の葉と共に舞い上がり、降注ぐ陽射しが全てを鮮やかに彩る。
いや、それ以上に。
「すごい、綺麗」
朗かに笑う彼女に全ては彩られたのかも知れない。
モノクロだった僕の心も。
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