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「須藤君は怪我をしたことで自分を責めてしまっている。塩野君も、らすととの殺陣は辛そうだし、らすとも須藤君を傷つけたことを後悔してる。みんな辛そうだから、私を責めることで劇のことを忘れてほしい」
須藤も須藤の代役の塩野も、表情を雲せた。
俺と同じように。
「みんなが辛そうにしながら劇が失敗するのを待つくらいなら、私が全部台無しにしてあげる……」
有紗は泣きそうな顔で喋り、そして、遂に一筋の涙が有紗の目から溢れた。
「これが……今の私にできる唯一のことだから…………私は……みんなが幸せになる選択肢があるなら……それを選ばずにはいられない……」
どうしてだろうか。
俺はとても長い時間を有紗と過ごしていた──────。
「私は……私に大切な物をくれたこの世界が好きだから…………この世界に……失望しないでほしい……」
──────なのに俺は、初めて有紗の心に触れた気がする。
なんなんだこの気持ちは……。
胸が締め付けられる……。
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