2人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺が出る」
「……転校生?」
その言葉は転校生の口から発せられたモノだった。
「俺が須藤の代わりをする」
「……蒼君が?」
泣きながら有紗は転校生に聞いた。
「幸いセリフも少ない。南森と渡り合えるのは俺しかいないはずだ。国松。俺にお前を守らせてくれよ」
「蒼……君……ごめんなさい……ありがとう……」
なんなんだ、この気持ちは。
みんな気づいてるんだ。
転校生が名乗り出たことで、劇に僅かな可能性が生まれたことに。
有紗も、内心混乱しているはずだ。
潰そうとした死にかけの劇が蘇りかけている。
でも、有紗の表情は自責の念で悲しみがこみ上げていた。
それでも、転校生に感謝の言葉を告げ続けていた。
「なあらすと。何がってわけじゃねえけど答えろ」
須藤は俺に近づき、俺の胸倉を掴んできた。
何故か俺は、抵抗する気になれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!