本番

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「じゃあ須藤。有紗のこと頼むな」 「おう。行ってこい」 「らすと。私何もできなかったけど、頑張って」 「そんなことないよ。有紗がいたから俺達は今ここにいる」  文化祭二日目にしてブルーウィーク最終日。  俺達三年九組は、二ヶ月以上前から準備してきた劇の本番を迎えていた。  まさに今から開演するという時に、俺は舞台袖の隅っこにいる須藤と有紗と一緒にいた。  二人の行いは褒められた事じゃない。  それでも、二人がいたから今のクラスの団結力がある。  この二人は別の価値観、別の視点を通してクラスメイトを見てきたんだ。  第一体育館は沢山の観客で賑わい、その人達で埋め尽くされた運動スペースを照らす灯りが消灯された。 「らすと。時間だ」 「そうみたいだな」  須藤に言われ、俺は二人に背中を向けた。 「らすと。お前は間違い無く選ばれた人間だ。だからこそそこに立てる。でも、何かを気にする必要は無い…………楽しんでこい。お前という立場を。それは、お前にしかできなかったんだから」
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