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「……そうするよ」
俺は二人のそばを離れ、ステージに向かった。
袴を着、片手に銀紙を巻いてテープで固定した竹刀を持って俺は幕の下りたステージに立った。
消灯直後から鳴り響く観客の拍手が鳴り止み、約四十分間に渡る劇が始まった。
江戸の幕末を描いた物語は支障無く進んでいく。
メインヒロインの智優が転校生の演じる最強の剣術使いに連れさらわれた。
俺は智優を助けに行くため、転校生と戦う。
転校生のセリフは少なく、昨日の放課後からずっと俺達は殺陣の練習をしてきた。
一番盛り上がる場面であり、ミス無くその場面を終える事はほぼ不可能だろう。
だから俺達は幾つかの合図を決めて、本来の筋書きからそれた時、元の筋書きに戻れるように打ち合わせをしていた。
智優がさらわれ、幾つかの場面が過ぎ、俺は竹刀を振る回数が増えてきた。
そしていよいよ最後の殺陣の場面を目前にし、舞台袖で智優は俺に話しかけてきた。
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