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――嫌いだ。
絵の具で塗りたくった様に青く白い空を見ながら、心の中で呟く。
別に、ハッキリと何がどうという訳では無いが…面倒臭い。
僅かながら不快感さえ感じる。
だから〈嫌い〉だ。
空が、ではない。ヒト……〈人間〉が。
何とも皮肉なものじゃないか、人である私が人を嫌うなんて。
私は地を蹴った。
ぐらりと世界が回り、今まで見ていた景色が上下に反転する。
天が地に、地が天に。
空は広大な穴となり、水面は天井となり、今まで立ち並び歩くものは全てぶら下がる何かへと変わる。
奇妙なものだ。
ただ上下に反転しただけだというのに、私はそのたった1~2秒あるか無いかの光景に言い知れぬ魅力を感じる。
その感慨を味わう間も無く、私は頭から水面に叩きつけられた。
景色が、世界が青く白く揺らめいている。
――綺麗だ。
絵の具の様に純粋で鮮やかで人工的な青と、不純物がふんだんに混じった薄く幻想的な蒼。
結局、どちらも本質は同じなのかも知れない。
このまま溶け込んでしまいたいとさえ思った。
この心地良い空間に、溶けて無くなる事ができたなら。
――瞬間。私の願いを聞き入れたかの様に、視界は薄れて白に染まっていった。
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