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レストランの表に、ボロボロの軽乗用車が止まっていた。
出所したばかりのはずの松雄が携帯電話や車を持っているのか?
そんな疑問を持てないほど、
私はいっぱいいっぱいだった。
「一人よ………凛々子は?」
真っ暗な潰れてしまったレストランの椅子に、
苦しそうな顔を浮かべている松雄がいた。
不法侵入しているのだろうか?
キョロキョロしていると、
「ここは、俺の死んだ母ちゃんの店だよ。お前のねぇちゃんは奥にいる。
金、 持ってきたか?」
ゆっくりと立ち上がり、
私に早くよこせと言わんばかりに手を差しのべてくる。
「………先に凛々子に会わせて」
痩せ細り、弱った動きを見せる松雄を見ていたら、
凛々子を助け出せそうな気がしていた。
「いいけど、………お楽しみ中かもよ?」
「え?」
元受刑者で、
孤独な環境。
末期ガンで性欲がないと本人も言っていたので、そっちの心配はないと思っていたのに、
「他に誰かいるの?………」
ニヤつく松雄の口元を見て、
ゾクッと鳥肌が立ち始める。
「一緒に凪子を襲った………?」
「まさか。出所してから会おうなんて思わねーし、あっちは病気でもなんでもないから一般社会に復帰できるつもりでいる」
じゃ、
一体、だれが?
聞き返せない私の顔を見て楽しそうに、
松雄がスマホをちらつかせた。
「興奮したよ、こんな身体の俺でも。
お前が縛られてヤられる画像………」
そして、
再び、
岩田の姿を目にすることになる。
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