葵の決意

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奥の部屋………。 電気は点かないのだろうか? 微かにアルコールの臭いがする。 「凛々子………どこ?」 スイッチをパチパチと押しても、闇が変わることなく、誰かいる気配だけが進む道標となった。 部屋の奥から聞こえてくる苦しそうな女の声は、 紛れもなく姉の凛々子のもの。 持っていたスマホで、 気配そのものに光を当てる。 そして、 記憶の中の、 無惨な凪子の姿をスライドさせてしまいそうな女の身体を、ハッキリと捉えることができた。 ………ううん、 あれは、 ″あのとき″の私にも重なる。 「………凛々子」 下着姿で、 ガムテープをぐるぐると巻かれて、 完全に自由を奪われていた凛々子と、 その側で同じく下着姿で、ふてぶてしい態度で酒を飲む岩田の姿。 「あれ? 終わった後だったな、 さっきまでヤってる音がうるさかったのに」 それ以上近寄れない私の背中を、 松雄がドン!と押した。
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