葵の決意

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凛々子を巻き付けていたガムテープをビリビリと剥いでいく。 松雄は、もう何も言わなかった。 「………あ、あおい」 まだドラッグやらの後遺症は残っているものの、 さっきよりは意識がまともになった凛々子の身体は、 カタカタ………と震えてしまっていた。 「これ、着て………」 その華奢な身体に やっと、 服を着せてあげることができた。 「………あの男、し、死んだの?」 凛々子を再び、私の車に乗り込ませる。 動かない岩田の方を見て、嗚咽を含んだ泣き声を上げた。 「うん、多分………だから………」 「妹の為に黙ってろよ!」 ――″直ぐに警察に行って″―――― この囁きは、 凛々子の耳に届いただろうか? 松雄の鋭い視線と声から隠すように、 運転席の凛々子の身体を抱き締める。 「私は死なないから」 最悪、警察が動かなくても、 自ら死を選んだりしない。 「葵………ね、このまま一緒に逃げ………」 松雄一人なら逃げ切ると思ったのか 凛々子がそう言って、私の腕を取ったその時、 「………うっ………!」 背中に、鋭い痛みが走る。 「早く行け、ここに今度誰か現れたらマジでコイツ、俺と地獄に堕ちるからな」 岩田を殴った瓶の欠片で、 私の背中を刺していたからだ。 私は、 そのまま、地面に倒れこんだ。
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