葵の決意

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………急に、どうしたんだろ? 止まらない涙を隠しながらケイタの家を出た。 ″一人にしないで″ 別れを切り出された私は、素直にそれを拒んだ。 私は、孤独のようでも、 天涯孤独というわけじゃない。 親も姉もいるし、 親戚だっている。 それは、ケイタもわかっているので、 首に絡められた私の腕の中で、 ″葵は、一人じゃねーやん″ と、首を横に振っていた。 私はあの事件以前から、人付き合いが得意だったわけでもなかったから、 今の状況を作ったのは、 アレがキッカケであっただけで、 これからも生きていく中で、 本音を語れるケイタとの出会いは、 私にとって、とても大きなことだった。 ″俺が完治するとか関係なしに、 もう、ここには来るな″ ケイタの病気なんて、関係なかった。 「ただいま………って、いないのか」 アパートに、相変わらず凛々子の姿はない。 岸島から預かった凛々子のスマホには 店のお客からと思われる着信がたくさんあった。 恋人のはずの岸島は、 鳴らしてこない。 『………なんかおかしい』 凛々子のことは気にかかっていたけれど、 ケイタの決心が覆らなかった事が、ただ悲しくて、 部屋で一人で泣ける事に感謝したりしていた。 「山村さん、どうしたの?その顔」
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