葵の決意

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「お前のねぇちゃん、ヤッちまうからな」 電話からの松雄の一言で、 凛々子の行方と繋がっていると悟った私。 「………凛々子、一緒なの?」 事件後の凪子の無残な姿に、 凛々子の姿が重なる。 「岸島と別れたとこ拉致ってきた」 電話を持つ手が震えてきた。 「凛々子、出して………凛々子に何もしないで」 寒さと恐怖で、 身体中がガタガタといいだした。 「………俺の身体にもう性欲は残ってねぇよ、 俺の死へのカウントダウンに同じように付き合ってもらうだけ、 親や、肉親でもない、 どーせなら、無情の女に同じ恐怖を味合わせてやりたい」 歪んだ欲望に、 常識的な説き伏せや反抗は、 無力なのだと、 身体中に鳥肌がたった。 「………凛々子、出して、声………ちゃんと………」 「いいよ、ほら」 暫くの沈黙のあとに、 電話から聞こえてきたのは、 「葵………け、警察………」 普通の状態ではないだろう、 息絶え絶えの、凛々子の声。 「この女でも、お前でも、凪子でもいい、 俺が死ぬまで側にいろ、 もしサツに電話したら、 お前のねぇちゃんにトドメ刺すからな」 --きっと、 凛々子は、 怪我をしている。 「………何処にいるの? 私、一人で行くから………」 この時ほど、 他人の命を消して欲しいと思ったことはなかった。
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