葵の決意

9/40
前へ
/40ページ
次へ
「刑事課ですか? どうされました?」 窓口の女性は、 私のことは覚えていない様子。 「………姉が………拉致されたみたいで」 「えっ」 大まかに、 出所したばかりの松雄の話をすると、 慌ただしく中へと消えていった。 冷えた空気。 何度来ても、ここは緊張する。 どうせなら、六年前の事件と関わった人がいい。 そして、 できたら、あの男じゃなければ………。 「山村さん、君にはよく会うね」 私の一つの願望を打ち砕く声。 中から此方へ向かってきたのは、過去の事件で、私に聴取してきた高野刑事。 「今度は誰が襲われたって?」 性的被害の女性を軽視する、 刑事失格(だと、私は思ってる)の男。 「………姉が怪我をさせられた可能性があります」 性的被害に遭うのは女側に問題があると思っている男尊女卑の刑事。 私の返事に対し、 また、小バカにしたような笑いを浮かべていた。 「山村さんのお姉さんは 襲ってくださいと言わんばかりの風貌だからねぇ」 やはり、 ここに来たことを、 後悔してしまう。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加