第1章

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余の征服計画は最終段階に入っていた。 愚かな人間どもの殆どは、余の仕草一つ一つに合わせてその表情を変化させる。 人間どもの表情を操ることなど、造作もないことだ。 だが、ここにきて高い壁に直面した。 余の意に沿わぬ顔をする人間が現れたのである。 気に食わぬので、鳩の群れに叩き込んだ。 逃げ惑う鳩にスカートを捲られ、戸惑う女。 ふっ。いい気味だ。 勝利を確信したそのとき。 不意に背後に気配が立った。 「白」 その声の主は、余の宿敵。 余がこの女を未だ扱いきれぬのに、この男はいともたやすくこの女を弄ぶ。 「やだ、何を言って・・・!」 女は頬を赤く染め、瞳を揺らす。 これが、余には決して見せぬ顔。 なぜだ。 なぜ余にその顔を向けぬのだ。 余の悩乱を他所に、女は男に叫んだ。 「シロじゃないわ、ポチよ!」  
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