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誘拐事件と聞いて、私は、ある事件を思い出した。それは今でも、頭の中に残る忌まわしい事件。
「それで、その事件とこの手紙、何か関係あるのでしょうか?」
「それは」
その時、どこからか悲鳴のような声が聞こえてきた。
「ゴキブリでも出たのでしょうか?」
重森さんは問う。
「とりあえず、行ってみましょう」
私たちは、先ほどの道を右往左往しながら、バタバタと音を立てて、廊下を走っていった。するとそこに、たくさんの人だかりが見えた。私たちは、人だかりの中をかき分けるようにして進み、列の最前列まで歩いた。そこには、メイドさんが、青い顔をして、ブルブル震えながら、立ち往生していた。
「どうしたのです?」
重森さんが、メイドさんに話を聞く。
「だ、旦那様が、旦那様が」
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