事件三 依頼人は森のくまさん

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 誘拐事件と聞いて、私は、ある事件を思い出した。それは今でも、頭の中に残る忌まわしい事件。 「それで、その事件とこの手紙、何か関係あるのでしょうか?」 「それは」  その時、どこからか悲鳴のような声が聞こえてきた。 「ゴキブリでも出たのでしょうか?」  重森さんは問う。 「とりあえず、行ってみましょう」  私たちは、先ほどの道を右往左往しながら、バタバタと音を立てて、廊下を走っていった。するとそこに、たくさんの人だかりが見えた。私たちは、人だかりの中をかき分けるようにして進み、列の最前列まで歩いた。そこには、メイドさんが、青い顔をして、ブルブル震えながら、立ち往生していた。 「どうしたのです?」  重森さんが、メイドさんに話を聞く。 「だ、旦那様が、旦那様が」
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