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一
その手紙をもらったのは、買い物から帰ってきてからのことだった。郵便受けを開くと、普通の便せんとともに、謎めいた名前が。
「『森のくまさん』?」
そう、その手紙の差出人は、あの有名な童謡に用いられた名前だったのだ。
「誰だろう?」
私は不思議に思いながらも、それを所長に届けるべく、事務所へと向かった。
「所長」
所長は私の声に驚いて、手に持っていたコップを落としそうになった。
「ど、どうしたんだね、香織君。真っ青な顔して」
「所長、ポストにこんな手紙が」
所長は黙って、封筒を受け取った。
「『森のくまさん』? 誰なんだね、この人は」
「わかりません」
「わからない?」
そう、私にもそれが誰なのかわからないのだ。不思議には思っていることだけど。
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