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「誰なんでしょう、この人は?」
所長は、手紙に目をやっている。
「会って話をしたいと、この手紙に書いてある。住所は世田谷区」
住所を聞いて、私はピンときた。
「何だね、知り合いかい?」
「いえ、妹がそこで働いているものですから」
私の妹、木内美奈子は、今年の四月から、この屋敷に住み込みとして働いている。そこに住まいになっている、一ノ瀬雄一郎のお世話をするために。
「一ノ瀬というと、あの一ノ瀬グループか」
所長の話によると、一ノ瀬グループは、一〇年前から、業績を伸ばしているという。
「彼には、息子が二人いたな。兄の喜一郎と、弟の裕次郎。おそらく、雄一郎は、彼の息子の名前だ。私のところに、こんな手紙を寄越したのも、彼らの仕業だろう」
所長はそういうと、ポケットに封筒をしまった。
「出かけるぞ」
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