事件三 依頼人は森のくまさん

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「誰なんでしょう、この人は?」  所長は、手紙に目をやっている。 「会って話をしたいと、この手紙に書いてある。住所は世田谷区」  住所を聞いて、私はピンときた。 「何だね、知り合いかい?」 「いえ、妹がそこで働いているものですから」  私の妹、木内美奈子は、今年の四月から、この屋敷に住み込みとして働いている。そこに住まいになっている、一ノ瀬雄一郎のお世話をするために。 「一ノ瀬というと、あの一ノ瀬グループか」  所長の話によると、一ノ瀬グループは、一〇年前から、業績を伸ばしているという。 「彼には、息子が二人いたな。兄の喜一郎と、弟の裕次郎。おそらく、雄一郎は、彼の息子の名前だ。私のところに、こんな手紙を寄越したのも、彼らの仕業だろう」  所長はそういうと、ポケットに封筒をしまった。 「出かけるぞ」
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