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信長は雁やら鶴やらを随分沢山採って帰ってきた。刈屋城で濃姫と合流すると、岐阜城へ帰った。
岐阜城に滞在する間、信長はその獲物を信忠に与えた。信忠はそれを捌かせて羹や焼き物を作らせ、弟妹たちに食べさせた。
濃姫はそれを側室たちと一緒に食したが、あとは引っ越しの支度に追われた。濃姫が尾張に行っている間に、侍女たちの手で整えられていたが、それでも彼女自身でやらなければならないこともある。
「どうせすぐに年末だ。信忠もすぐに安土へ来るというし。荷物は信忠に任せて、そなたは俺と身軽に来い」
信長は濃姫の、まるで輿入れ行列にでもなりそうなほどの荷物の量を見て、そう言った。濃姫もさすがに苦笑する。
「女はどうしても荷物が多くなってしまって……」
「ははは、そりゃそうだ」
そして、いざ、岐阜を発って安土へと向かった日。信長はしばらく濃姫に合わせて手綱を操っていたが、急に、
「馬を走らせたくなった。このまま一気に安土まで突っ走る。そなたは二、三泊しながら、後からゆっくり来るとよい。何なら信忠と合流せよ」
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